【物 語】 |
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深夜の国道。トラックの前に飛び出した、喪服の女・トウコ。
コンビニで買い物をし終わったばかりの男・ナガノは、とっさに見事な回転レシーブを決め、トウコを助ける。ナガノがどこまで行くかも知らないのに、トウコは「車に乗せてください」と頼む。「こんなにレタスをたくさん積んでいる人に、悪い人はいないだろうから」という理由で、ナガノを全く警戒していない。トウコは女優で、撮影現場から喪服の衣装のまま逃げ出してきたのだと言う。興味を持ちながらも、半信半疑のナガノ。ラジオから流れてくるどこかのニュースや、見事な回転レシーブの話は大きな盛り上がりをみせるわけではなかったが、この深夜のドライブはトウコのなかにある何かを変えるきっかけになっていった。 |
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小さな映画館。放映後に気持ち良さそうに寝入るトウコ。
声をかけて来た映画館の女性は、昔の知り合いのキクチだった。ふたりはコンスタントに仕事をする女優とシナリオライターという関係で出会ったが、あるとき、キクチは突然姿を消してしまっていた。キクチがなぜ書くことを止めてしまったのか、ひとつのことをずっと続けるということは、時間の渦に飲み込まれてしまうということなのか。時間を経たいまだからこそ感じる何かを、トウコもキクチも感じていた。トウコの軽やかな雰囲気が、最近、書いていた頃のことを思い出すというキクチの背中をそっと押した。 |
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ひと気のない動物園。ツチブタの柵の前を通りすがるトウコ。柵の中を覗いている女・ヤスコに「この時間じゃ無理ですよ」と声をかける。動物園のアルバイトの面接を終えて来たばかりのヤスコは、今回もダメだと思うと告げる・美術大学にも5度落ちているし、わたしは運に見放されている女なのだ、と。鳥の柵のまえで、自由について話すふたり。戻る場所があるからこそ自由に飛んでいける。自由に飛べるということは、受け入れてくれる場所があるということ。これから何かが始まろうとしているヤスコとの出会いは、トウコの足取りを更に軽くしていく。 |
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東京の街に暮す、幾千万人の人たち。それぞれの中にそれぞれの思いがあり、人生がある。ほんの一瞬交わした会話は、心の奥深くにあるオアシスに気づかせてくれるきっかけになるかもしれない。オアシスを探すトウコの旅は続いていく。だが、自分のなかにある未知なるものに気がついたトウコの目に映る東京の街は、違う色をしていた。 |
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【キャスト】
小林 聡美 (こばやし さとみ)
加瀬 亮 (かせ りょう)
黒木 華 (くろき はる)
原田 知世 (はらだ ともよ)
【監 督】
松本 佳奈 (まつもと かな)
多摩美術大学グラフィックデザイン卒業。
数々のCM演出を手がけたのち、「めがね」(07)でメイキング映像から特典映像のクレイアニメを演出。監督デビュー作「マザーウォーター」(10)に続き、本作は2本目となる。
中村 佳代 (なかむら かよ)
日本大学芸術学部映画学科を卒業。CM製作会社ピラミッドフィルムに入社。CM、PVを多数手がける。現在は、フリーランスで活躍。主なCMに、「チオビタ」、「ローソン・ロールケーキ」、「ジャックスカード」、「ユニチャーマム上海・ソフィースーパースリム」、「AC・コトバダイブ」など。PVは、「曽我部恵-BAND・永い夜」、「髭・青空」など。
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『東京オアシス』
配給:スールキートス
10/22(土)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国順次ロードショー
(C) 2011オアシス計画 |
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