「田鶴は…手向かって来るであろうな」
藩命は妹・田鶴の夫を討つことであった。
藤沢周平作品群の中で、ひときわ名作との声が高く、その映画化が切望されていたのが「小川の辺」。なぜならばそこに、義と情の狭間で揺れ動きながらも、その運命に静かに、そしてしなやかに立ち向かう主人公たちの姿が真摯に描かれているからに他なりません。
海坂藩士・戌井朔之助、その妹・田鶴、戌井家に仕える若党・新蔵。ひとつ屋根の下で兄弟のように育った三人。過酷な運命は、彼らを海坂から遥か遠い、下総の小川の辺へと導きます。無垢だった絆が切り裂かれようとする時、三人が選んだ道とは……。
義と情と狭間で揺れ動きながらも、最後まで、人としての道をひたむきに突き進もうとする人間たちの『想い』の物語が、今、ここに誕生します。
藩命か。愛か。海坂藩から江戸へ100里の旅。 |