【あらすじ:第一夜】
第二次世界大戦前、欧米先進諸国における自動車産業が持つ圧倒的技術力、産業力を目の当たりにしたある青年は、帰国と共に自らの手で国産自動車産業を育て上げたいという夢を燃やしていた。
青年の名は 愛知佐一郎 (佐藤浩市)。当時、父である愛知佐助が発明した自動織機 (自動的に糸を補充しながら繊維商品を織り上げる機械) は欧米企業から特許権を高額で買い求められるほどになっており、 彼はその製造を手掛ける愛知自動織機の常務を務めていた。
自動織機会社の重役でありながら、自分の目で見たアメリカ自動車産業の隆盛を忘れられない佐一郎は、「 これからは日本にも車の時代が来る。」 と確信し、当時としては無謀とも言われた国産自動車の開発に乗り出すことを決意する。
佐一郎は早速、必要な技術者を自動織機の工員の中から選び出し、更には大学の同窓を頼って各技術の指導を仰ぐなど、開発を推し進めた。
しかし愛知自動織機の社長を務める 石山又造 (橋爪功) はこれに猛反対。資金を一度は捻出するが、その後は自分の責任で資金集めもするよう通告する。
「日本人の為の車を、日本人の手によってゼロから全て創り上げる。それが俺の理想の国産車だ。」
― 集めた工員たちの前で高らかにそう宣言した佐一郎だが、車の心臓とも言えるエンジンの鋳造工程で早くも大きな壁が立ちはだかることになった―。 |