2000年初頭、現代― 歴史に消えた伝説のフルコースを再現せよ。
依頼人の「人生最後に食べたい料理」を再現して高額の報酬を得る、通称=最期の料理人・佐々木充。彼はすべての味を記憶し再現することのできる、絶対味覚=“麒麟の舌”の持ち主である。幼少時に両親を亡くした充は、同じ境遇の柳沢健とともに施設で育ち、自らの才能を頼りに起業。しかし経営に失敗して多額の借金を抱え込み、いまや料理への情熱も失いつつあった。そんなとき、巨額な依頼が舞い込んできた。依頼人の名は楊 晴明。世界各国のVIPが彼の料理を食べに来るという、中国料理界の重鎮。楊の依頼とは、かつて満州国で日本人料理人・山形直太朗が考案しうたという、伝説のフルコース〔大日本帝国食菜全席〕のレシピの再現であった。楊はかつて山形の料理助手としてメニュー作成に協力していたが、太平洋戦争開戦によって消息を絶った山形とともにレシピ集も散逸されたといのである。そして驚くべきことに、山形もまた充と同じ絶対味覚の才能を持っていたという。太平洋戦争開戦直前の満州国で、山形の身に何が起きたのか…?なぜ料理は発表されないまま歴史の闇に消えてしまったのか…?70年の時を超えて、充は、真実へと辿りつくことができるのだろうか。 |