一人で旅を続ける女がいる。彼女の名は市(いち)(綾瀬はるか)、三味線を弾きながら唄う盲目の旅芸人、瞽女だ。人と関わりたくない市は、自分と同じ盲目の女が、男たちに脅かされても素知らぬ顔。彼らが今度は市に手をかけようとした時、一人の侍が止めに入るが、なぜか刀を抜くことが出来ない。その瞬間、仕込み杖から抜いた市の剣が、男たちを容赦なく斬り捨てる。
侍の名は、藤平十馬(大沢たかお)。とある宿場町にたどり着いた十馬は、賭場でひと儲けした帰り道に5人の男たちに囲まれる。そこでもやはり刀を抜けず、一瞬でカタをつけたのは、またしても市だった。
市に斬られた男たちは、町はずれの山に根城を構えて町を荒らす万鬼(中村獅童)の手下だった。町を仕切る白河組の2代目虎次(窪塚洋介)は、彼らを倒したのは十馬だと思い込み、彼を用心棒に雇う。
万鬼はかつて幕府指南役に推挙されるほどの侍だったが、顔に醜い火傷を負って失脚し、無法者と成り果てる。万鬼は殺された手下たちの傷跡を見て、かつて闘った、居合い斬りの名手の技だと気付く。
町の不穏な空気の中で、十馬と市は反発しながらも惹かれあう。悲しみが滲む市の唄声に心を揺さぶられる十馬。市もまた偶然触れた十馬の手の温かさに心を乱される。ある日、市の心を開きたいと願う十馬は、自分が刀を抜けない理由を打ち明ける。
遂に、万鬼堂が町を襲撃する。十馬を連れ去ろうとする奴らの前に、立ちはだかる市。退屈な男たちを次々と斬り、自分が何者かをあかす市。実は逆手居合い斬りの男を捜している市は、彼を知る万鬼と対決するつもりなのだ。
連れ去られた市を助けるため、刀を振り絞って立ち上がる十馬。果たして、2人の運命は? |