昭和七年、戦時下の日本で軍部の力が日々強まっていた頃、幕府からの恩恵を受け、伝統空手を未来に伝える者たちがいた。
その名も、義龍(八木明人)、大観(中達也)、長英(鈴木ゆうじ)。彼らは、師・柴原英賢(夏木陽介)の教えの元、山奥にひっそりと佇む道場で日々の鍛錬にひたすら励んでいた。
そんなある日、谷原分隊長(白竜)率いる第七憲兵隊板戸分隊が、英賢の道場を国の管轄下に 置くためにやってくる。英賢は、御上との証書を見せ申し入れを断るが、軍隊側は一切聞く耳を持たない。そして、谷原分隊長が長英の腕を切りつけた瞬間、怒りにかられた大観は憲兵隊員を一撃で倒してしまう。
そんな大観に、「空手に先手なし。こちらから相手を突いてはならん、蹴ってはならん」と教えを説く英賢。しかし師の教えに反し、大観は突きや蹴りを駆使し、次々と憲兵たちを倒していく。そしてついに谷原分隊長にその手は伸びるが、英賢は大観ではなく義龍に勝負をするよう命じる。谷原が何度切りかかろうと、義龍は太刀を払うのみで攻めてはこない。最後まで「空手に先手なし」を貫く義龍に対し、度重なる払いを受け力尽きた谷原は、「何故とどめを刺さない。俺に生き恥をかかせるつもりか」と言い残し、撤退を決意する。
軍隊との一件の後、英賢が突然の病に倒れてしまう。病床に伏した英賢に、「何のために技を磨くのか?強くなるためには勝負が必要」と問う大観。しかし英賢は、武道の精神を「己の技を全力で向けるべき相手は己のみ。それは、生涯に一度あるかないかの至福の時」と説き、古くから伝わる伝承の証=黒帯を見せ、「この黒帯はわが空手を継ぐべき者が手にするもの・・・時がくればわかる」と言い残し、3人が見守るなか、静かに息を引き取るのだった。 |
再び、憲兵隊が道場に現れる。今回の目的は、道場の明け渡しのみならず、空手を軍隊の訓練に取り入れ彼らを管理下に置こうというものだった。3人は不本意ながらも軍と行動をともにすることを選ぶが、道中、谷原の子どもたちが現れ、義龍に突如襲いかかる。闘わずして大敗を期した谷原が、不名誉を恥じ自害したというのだ。事実を知った義龍は、一切の抵抗も見せず、刃で腹を突かれ谷底へと落ちていく・・・。
数日後―― 一命を取り留めた義龍は、畑田家の人々に助けられ、娘の花(近野成美)の献身的な看護によって徐々に元の体力を回復していく。そして平穏な日々のなか、義龍は改めて自分には空手しかないことを悟り、再び鍛錬に励むのだった。
そんなある日、見知らぬ男たちが畑田家にやってくる。父親の借金の肩代わりに、花が奉公に出されることになったのだ。師の教えを頑なに守るが故、自ら攻撃ができない義龍は、花が連れ去られるのをただ黙って見ているのみ。しかし、花の弟・健太に請われ、彼と共に花を探すため町へと向かう。 |
一方、大観は師の教えに背き、武器としての空手を憲兵隊に教え込んでいた。大観は、第七憲兵隊長の郷田(大和田伸也)から、隊を強化する目的でより多くの訓練場が必要となるため、道場破りを依頼される。闘いによって自分の強さを計りたいと常に考えていた大観は、次々と試合を仕掛け、町の道場を閉鎖に追い込んでいく。しかし実は、郷田は部下の大文字曾長(小宮孝泰)とともに大観を利用し、将来、略奪した訓練場で女たちを使った商売を企てていたのだ。
義龍と健太は町に着き、花をさらった男たちを見つけ賭博場へとたどり着く。そんな2人に気づき、次々と殴りかかってくるヤクザたち。しかし、ここでも義龍は一切手を出さず払いだけで凌ぐが、健太を人質として捕えられてしまう。抵抗せず殴られるがままの義龍の横から、一瞬の隙を見て逃げ出した健太は、芸者・千代(吉野公佳)に助けを求める。 |
その場に居合わせた大観は、簀巻きにされ身動きの取れない義龍のところへと向かい、銃をチラつかせるヤクザたちに臆することなく容赦ない拳と蹴りを浴びせる。期せずして大観に救われることとなった義龍は、花やほかの捕えられていた娘たちを逃すことに成功するが、翌日、郷田によって誘拐犯としての容疑をかけられ、指名手配の身の上となってしまう。
義龍を逮捕するためやってきた憲兵隊、そして大観と長英。娘たちを守ろうと寺に籠城する義龍と村人たち。そんな義龍に長英は、「銃を構える憲兵隊たちを前にしても先生の教えを守るつもりか」と問う。答えを出せずに迷う義龍に、ついに大観が1対1の勝負を申し出る。
果たして、義龍は大観との闘いに応じるのか?
また真の強さ=黒帯を手にするのは、一体誰なのだろうか? |